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MasashiSalvador(在日東京人) / 茶道 / 音楽/ 映画/ 雑記

「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア (9/200)

本の感想を書き留めておく程度のブログでも三日坊主になってしまうのは中々悲しい話だ(何か感想を書こうと思って書き留めたメモはたくさんある) 噂の広まり方やSNS上の情報戦の実態を肌感を持って知っておきたかったので下記の本を読みました。

「いいね! 」戦争 兵器化するソーシャルメディア

「いいね! 」戦争 兵器化するソーシャルメディア

誰もが情報戦争の戦闘員に。その「シェア」「いいね! 」が殺戮を引き起こす

アメリカ大統領選挙イスラム国、ウクライナ紛争、インドの大規模テロ、メキシコの麻薬戦争……。 国際政治から犯罪組織の抗争まで、SNSは政治や戦争のあり方を世界中で根底から変えた。 インターネットは新たな戦場と化し、情報は敵対者を攻撃する重要な兵器となった。 いまやこの戦場で人びとの注目を集めるべく、政治家やセレブ、アーティスト、兵士、テロリストなど何億人もが熾烈な情報戦争を展開する事態に!

なぜネット上に「荒らし」やフェイクニュースが氾濫するのか?

フェイクニュースは、真実を伝える記事より約6倍速く広がる。 ・以前に聞いたことがあるニュースは、嘘であっても信じられやすい。 ・SNSで最も早く遠くまで伝わる感情は怒りである。

軍事研究とSNS研究の第一線で活躍する著者が、多数の事例をもとに新たな戦争の実態を解明。 SNSのグローバルな脅威を突きつける衝撃作!

佐藤 優氏絶賛 「誰もが戦争の当事者になり得る新種の戦争の本質に迫るタイムリーな一冊」 ――本書解説より

目次

  • 開戦――「いいね! 」戦争とは何か
  • 張りめぐらされる「神経」――インターネットはいかに世界を変えたか
  • いまや「真実」はない――ソーシャルメディアと秘密の終わり
  • 帝国の逆襲――検閲、偽情報、葬られる真実
  • マシンの「声」――真実の報道とバイラルの闘い
  • ネットを制する者が世界を制する――注目と権力を求める新たな戦争
  • 「いいね! 」戦争――紛争がウェブと世界を動かす
  • 宇宙を統べる者――「いいね! 」戦争のルールと支配者たち
  • 結論――私たちは何を知っているか、何ができるか

感想

SF-loverのメーリングリストから始まったインターネットを利用したコミュニケーションは確実に過去に描かれたSF的な未来を生み出しつつある。 皆さん御存知の通り、そこでは人々が信じる物事が「真実」とされ、「真実」であることが証明できる物事がかき消される恐れがある。戦争や紛争はSNSを利用して行われるように成り、 アメリカ軍は戦争をシミュレーションするのと同時に、軍事訓練用の架空のインターネットを用意して情報線をもシュミュレーションしているらしい。それだけ、ロシアやISISが行っているような情報線は苛烈さを増しているのであろう。

感情が伝染することで社会に亀裂が生まれつつあるという意味では今の日本はまさそれだし、社会がネットワーク上のトロールと戦う力が弱まっているのも感じる。 インターネットは今日も地獄だし、特に日本に置いては先行きが不透明であるように思える。 必然としてのポスト・トゥルースの時代において、人間は幸せになれるのだろうか? 良きAIと悪しきAIはどちらが勝利するのか? テクノロジーで検閲性と透明性公平性の中間地点をうまく見い出すことはできるのだろうか?

開戦――「いいね! 」戦争とは何か

ISISがもたらした恐怖をもたらす情報の拡散にたじろいでイラク軍が撤退していき、ISISの台頭を許した様はナチスの電撃作戦を思わせる。 現代の情報戦は「物語」、感情、信ぴょう性、コミュニティ、情報氾濫を巧みに利用する。 インターネットはあらゆる秘密を守ることを不可能にした。真実を圧倒し続けるバイラル性がパワーとなるアテンション・エコノミー上では、 戦いの主体は双方に情報を拡散し情報に触れる人間の心理の操作を行おうとする

張りめぐらされる「神経」――インターネットはいかに世界を変えたか

インターネットの発展に関する賞。SF-Loversの誕生からインターネットの普及、Facebookの誕生まで。 いくつかの巨大な企業に独占されるようになった情報ネットワークはこれまでの通信網の発展の歴史に則っているとも言える。

いまや「真実」はない――ソーシャルメディアと秘密の終わり

インターネットとソーシャルメディアの発達により、秘密を守ることや記録を忘却させることはほぼ不可能になった。例えば、「マカカ・モーメント」... 失言が瞬時に拡散し永続化することで政治家の政治生命が奪われるように(かつてはあり得なかった)と呼ばれる事象が発生したり、エクササイズを記録するアプリから米軍の基地の場所がバレたり、ビンラディン襲撃作戦がたまたまあ世界に実況中継されることになったり、「気づかれない」軍事作戦がほとんど不可能になっていることなどが挙げられる。 また、OSINT(オープンソースインテリジェンス)の発達により、マレーシア航空777便の事件の原因がロシア軍にあることが突き止められるなどした。専業主婦の男が、YouTubeGoogle Mapを駆使し、シリアの内戦に関するブログを執筆していた。アサド政権が神経ガスを利用した証拠などを集めていたが、彼がマレーシア航空の事件に関する調査プロジェクトを開始したのだ。ミサイルを発射した部隊まで特定し、実際に発射した人間をVK上のロシア兵の母や妻がコミュニケーションする掲示板的なもので探り当てたらしい。OSINTはかつてのCIAやKGBと同程度の情報収集能力を発揮する。 一般市民でさえもかつての諜報機関に匹敵する調査能力を持つのだから、この世に「秘密」など存在し得なくなっているのだ。

帝国の逆襲――検閲、偽情報、葬られる真実

ロシアではアラブの春の影響からVK上で反プーチン的なかきこみが増えたことをきっかけに、VK創業者を「自動車事故の犯人」としてでっちあげて逮捕しようと試みたらしい。結局VKの創業者はプーチンの息のかかった人間に株をすべて売渡し、国外に逃げる羽目になった。おそロシア文化大革命を招いたとして批判された群衆主義は習近平がインターネットを「世論を凝縮して一つの強力な民意にする」というビジョンを実現するツールとして称賛しだしてから返り咲きを見せ始めている。 ロシアでは大学を出た後に職を得ることのできなかった若者がインターネット上で偽の情報を拡散する仕事に携わっている。 アゼルバイジャンやインドでも除法操作のための影の軍団の動きがあることが指摘されている。

マシンの「声」――真実の報道とバイラルの闘い

マケドニアの若者が作り上げたフェイクニュースサイトがトランプ支持者によって多大に拡散され、結果的に大統領選に影響をもたらした。マケドニアではフェイクニュースサイトを作ることで若いギークたちが金を持つようになったので、それまではマッチョがモテていたスクールカーストが反転し、ギークがモテるようになったという。(「ローマ法王がトランプを支持」などの記事を拡散した) アメリカか(そして日本で)で最も幅広く広まっている「嘘」(ないしエビデンスが無いことが認められているもの)の一つに「反ワクチン」運動が存在する。フィルターバブル、エコーチェンバー、確証バイアス、そしてホモフィリーなどの人間の本質的な性質が嘘が超拡散する時代をもたらしている。人は怒りに任せて馴染みのある主張を何度も何度もシェアする。 ヒラリー・クリントンが関係する幼児性愛者の秘密組織がアジトにしているという噂のピザ屋に男が「正義感」から銃を持って乱入したのは2016年である。それ以来、各地でそのような事件が起こっていないだろうか?

ルーモアカスケード(噂の滝)を分析すると、偽りのほうが真実よりもより遠くへ。、早く深く広く拡散することがわかっている。

ネットを制する者が世界を制する――注目と権力を求める新たな戦争

一貫性と共鳴と真新しさが、人が情報を「物語」として捉えてシェアするための条件となっている。怒りは喜びよりも影響力があり、早く伝染する。また、「情動感染」と呼ばれる現象が知られており、他者との直接の相互作用がなくとも、怒りや喜びのメッセージを繰り返し見るだけで自分でも同じ感情を抱くようになる。人々が共感をもち信じるためには「信憑性」も大切である。

「いいね! 」戦争――紛争がウェブと世界を動かす

IDFとハマスの情報戦(IDFの方が圧倒的に強い)紛争地の幼い少女が情報発信の担い手として少年兵として戦争に参加させられている。 ハッシュタグの乗っ取り(美しい写真で抗議活動のツイートの量を圧倒したり) ロシアとウクライナのクリミアを巡る紛争の裏で行わっれている上皮応戦(親ウクライナ派が大量虐殺を隠蔽しているという偽情報なや、ウクライナ兵が少年を裸にして十字架に貼り付けにしたなどの偽情報お拡散)ソックパペットと呼ばれるいくつもの偽の人格を持ったアカウント群を操作する若者たち

宇宙を統べる者――「いいね! 」戦争のルールと支配者たち

コンテンツモデレーションの歴史(AOL -> Facebook -> モデレータ専業者の地獄)

結論――私たちは何を知っているか、何ができるか

水平思考ができないと嘘に騙される デンジャラススピーチ(社会のサブグループ感の暴力を促すものの研究から生まれた言葉) マイノリティ日台して、憎悪を掻き立て暴力行為を促すことを狙った公的発言を指す * 人間性を失わせる言語(人を動物に例えたり、不快なものを人間以下のように扱う) * 暗号化された言語(ミームの利用) * 不純さの指摘 * 鏡の中告発(自分たちこそが攻撃されているという嘘を付く) * 決めつけの正義感