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MasashiSalvador(在日東京人) / 茶道 / 音楽/ 映画/ 雑記

ソフトウェア化する世界に添えて (1)

マーク・アンドリーセンの "Software is eating the world"というパンチラインが大好きだ。個人のレベルで生理的に喜んで受け入れるにしろ、 嫌悪感を持って見ないふりをしようとも、合理性がある限り不可逆的に世界はソフトウェア化するだろうと思っている。 しかし「なぜそう思うの?」と友人や知人に問われたときに理路整然とした理由を返せていない自分がいるのも確かだ(元々人に説明するのは得意でないし、好きではないのだが) 少し整理を試みるためにブログに書き留めておこうと思う。

世界がソフトウェア化するとは?

定義は何なのか、具体的には何が起こりうるし、何が起こっているのか?答えられないと恥ずかしいように思う。 幾つかの現象に裏付けされた概念を統合した言葉がソフトウェア化であると思うが、下記のように整理できると思う 箇条書きをする前に、一応「ソフトウェア」の辞書的定義を確認しておく

kotobank.jp

コンピューターを動作させるためのプログラムや命令を記述したデータのまとまり

software | translate English to Japanese: Cambridge Dictionary

programs that you use to make a computer do different things

ケンブリッジの英英訳はなんかしっくり来ませんね...コトバンクの定義のほうがそれらしく見えます。 「プログラムや命令を記述したデータのまとまり」これはいいですね。 ソフトウェア化=プログラムや命令を記述したデータのまとまりとして世界を構成するあらゆる製品・社会システム・ビジネスが表現されるようになること と言うことができそうです。辞書って引いてみるもので、この表現は割と個人的にはしっくりしました。 そして、この=がもう少し具体的には何を表すかと言うと

  • ソフトウェアがハードウェアや社会システム、ビジネスの設計などの様々な設計・アーキテクチャを規定するようになること
    • =ソフトウェアで取り扱うこと(あるいはソフトウェア的に取り扱うこと)があらゆる物事の前提に置かれること
  • ソフトウェアで取り扱う(もしくはソフトウェア的に取り扱う)とは?
    • 物理的な実体を意識することなく機能を利用することが出来るようになること
      • モノを送る (or データを送る)
      • 移動する
      • モノを瞬時に手に入れる(買う元を問わない)
      • 泊まる(or スペースを利用する)... これは少し語弊があり、物理的な実体が本質的に価値を持つだろう
    • コモディティとしての機能(or リソース)は使いたい分だけ柔軟に利用することができる
  • アルゴリズムやロジックを改善することで、機能を質的に改善することができ、改善の反映が限界費用0で行えること
    • それにより、高速に改善が行えること .... ソフトウェア化というより、プロダクト化に近いかもしれない
  • アルゴリズムやロジックの実装や更新を柔軟にかつ望むタイミングで行えること
    • 一度リリース・施行しようとも、後から質の改善を行うことができる

ソフトウェア化の流れを支えるもの

  • ソフトウェアのリソース確保が劇的に用意になった
  • PCの普及によるプロダクトやサービスの制作・製造プロセスのデジタル化
    • デジタル化が早かったもの(1) ... ニュース・音楽・写真・映画などなど、本来的に「情報」であるもの
    • デジタル化が早かったもの(2) ... 手紙・会話 ... 「情報」の交換であるもの
  • 常時接続課+スマートフォンの一般への爆発的普及による顧客接地面デジタル化(toC、もしくはリアルビジネスにおいて顕著に)
  • 企業の競争力の原点=差異化の原点がデータに(性格には、ノウハウではなくデータに。人間のノウハウがロジックとし記述できること、もしくは深層学習的なモノで置き換え可能であることが示され始めた)
  • 安価なカメラやセンサの普及による「デジタル化」or「データ化」出来る領域が拡大
    • ソフトウェア的に取り扱えるものの増大

なぜ不可逆であり合理性があるのか

世界のある程度の部分を構成している企業の経済活動と競争を鑑みると、明らかにそこに合理性があります。企業の競争力を現在上げている利益の大きさと未来に上げることができる利益の期待値(もしくは、未来に上げることができる利益の期待値、だけでもいいかもしれません)と表現すると、

  • コストを下げる方向にソフトウェアが必要 (SoR的なシステム)
  • 既存の顧客を満足させ、潜在的な顧客を引きつける目的を達成するためにソフトウェアが必要(SoE的なシステム)

両者にソフトウェアが効果的に働くと言えますが、常時接続化とモバイル端末の普及により特に後者が加速したと思われます。モバイル端末というタッチポイントの爆発的な増大と、それを用いたデータ分析・リアルタイムの行動解析からの品質改善を用いることによる製品の改善サイクルの高速化が進みました。当然、ソフトウェア的・アルゴリズム的に取り扱えないと競争に負けてしまうわけです。実態のあるモノを売るサービスでさえも、販売経路はデジタル化されソフトウェア的に取り扱われているため、同様の競争に不可逆的にさらされます。また、エンドユーザがモバイル端末を用いない領域(例えばファミレスでタブレットで注文する場合や、焦点でリアルな購買行動をする場合)においても、別の安価なデータを取るデバイスにより、購買行動や傾向をデータ化してソフトウェア的に取り扱うことが可能になっています。他にもテスラなんかはよく例として挙げられますが、一度リリースした車のソフトウェアをアップデートすることで乗り心地や燃費の改善を行うことができるようになっているのです。農作物がどういう味になるかもデータで捉えることができそうですし、対面でもやり取りが前提となっていた医療や教育という領域でもインプットとアウトプットを明確に定めることでソフトウェア的な取り扱いができるようになっています(この辺りは別途整理します)

ソフトウェア化は進めば進むほど、ソフトウェア化されていない領域のソフトウェア化への合理性を強めます。なぜなら、利用範囲を拡大するための限界コストが0に近い(製造の限界費用がゼロに近い、もちろんマーケティング費用などはかかりますが置いておきます...)モノに対応していくためには、人で対応するには足りないからです。それゆえ、安全性や信頼性の担保、規制などなど、政治の世界を含むあらゆる物事も不可逆的にソフトウェア化しそうです

お気持ち

  • 今後はプロセスのソフトウェア化が進む(単なるデジタル化ではなく、承認作業や確認作業を含むソフトウェア化、そしてそこにはおそらく、DLT的なものが用いられる)
  • ソフトウェアで取り扱うためにアーキテクチャが変化していく
    • データの標準化・業務の標準化が進む(はず)・規制のソフトウェア化が進む
  • が、御存知の通り日本はその辺りの動きは遅れがち
    • 一重にはソフトウェアエンジニアが少ないもしくは理系・文系が分断されていること、労働者の新たな教育の機会が削がれていることなどが挙げられると個人的には思っている
    • エンジニアリングわかる人とか中小企業には少ないのでは?それに加えて、ハッキリ行ってしょうもないシステムで業務を効率化しようとして発注欠けると結構金とられるんじゃないか?(仮説)    * 業務をソフトウェアに合わせるのではなく、ソフトウェアをカスタマイズしてしまいがち(仮説)
    • 規制等がソフトウェア的発想で作られていない=人ででカバーという発想になりがち
    • 人を採用すると固定費になるのでアレ(人か切りづらいのでソフトウェアで効率化しようという圧が弱い)
    • エンジニアスクールを増やすより、業務の現場に出るおばちゃんにGASやVBAを勉強して欲しい
      • 力仕事や体力勝負でないし、リモートでも価値を出しやすいので、より多くの女性がソフトウェアエンジニア的スキルをつけて世に出るのはすごい価値がありそう
      • とはいえ、ソフトウェアエンジニア界はホモソーシャル
        • セクハラ的発言も多く、女性が明らかに入りづらい -> この空気は打破しないといけないのでセクハラ的発言には厳しく行きたい